2016年6月12日日曜日

6月12日 グループワーク!(2)

いよいよ、来週は仙台市の神社とお寺の歴史を調べて発表しなければなりません。このまえの総合的な学習の時間は、1~3班の発表でした。でも実は、僕たち5班は何の準備もしていませんでした。前半組の発表を聞きながら、僕たちは「えっおれたちやばくね?」「やばいやばい」「みんな真面目にやってて草不可避ww」と、口々に言いあいました。

これまでの2ヶ月間、ぼくたちは何をしてきたのか?振り返ってみても、ほとんど記憶がありません。たしか、週一の総合の時間に、ぼくは図書室で、歴史のマンガを読んでいた覚えがあります。目黒ちか子ちゃん家のお寺に、お話を聞きに行くという、話がすでに成り立っていたので、「たぶん桃山くんあたりが予約を取って何とかするか、女子たちがサッサと話を聞きに行っているだろう」と思い、ボケっとしていました。

目白くんは、始めからやる気がなく、他の友達とくっちゃべっていました。では桃山くんはというと、実は、図書室の、僕の反対側の席で、マンガを読んでいました。桃山くんはとても落ち着いていたので、「桃山くんには、なにか考えがあるのだろう、じゃあ、僕は口を出さなくてもいいか」と思っていましたが、実は、桃山くんも、何もやっていなかったようです。

女子たちはというと、3人で固まって、ずっとおしゃべりをしていました。といっても発表のことはまるで話さず、プロフを書いて交換したり、ノートにラクガキしたり、だらだらとしていたようです。「やばいねー」とは言っていたようですが、では、なぜ発表の準備を進めよう、という話にならなかったのかというと、その原因は、ちか子ちゃんは、お寺の住職である、お父さんのことが嫌いだからなのです。ちか子ちゃんのお父さんは、結構有名な人です。ぼくも、お母さんからいろんな話を聞きました。

ちか子ちゃんのお父さんは、とても顔が広いです。自分のTwitterとFacebookアカウントを持っていて、自分の活動に関わる情報をたくさん発信しています。必要もないのに、境内に五重塔や枯山水の庭園を増築しているそうです。そのくせ実は、家計は火の車なのだそうです。仙台市長への立候補を狙って、ちか子ちゃんのお兄さんの通う中学校の、PTA会長をしたり、地域の町内会長をしたり、商工会議所に出入りしたり、市内のイベントの実行委員を、たくさん担ったりしていて、当選に向けての足場を固めているのです。仙台の市議会議員や、商工会議所の職員、地元の名士の方々を集めて、意見交換会という名目で、宴会をするのだそうです。

そろそろ、発表の準備をしなければまずいという話になり、昼休みに6人で話し合いをしたとき、目黒さんが話し出しました。「私、日本舞踊やってて」「ちか子ちゃんのお母さん、日本舞踏の先生だもんね」矢板さんが言います。「えっ、知らなかった」ぼくは言いました。「でもね、あれ、オヤジがあたしを出世のダシにしているよーなものでさー」「考えすぎじゃないw」山田さんが笑いながら言います。「大人たちの前で踊ると、みんなすごい喜んでくれて、拍手してくれて、みんないい人たちだし、嬉しいといえば、嬉しいけれど、最近、オヤジが私を、おもてなしのための道具にしてんのかなとか考えるよーになってきて、やだなーと思って。お風呂も一緒に入ろうとするし」

「最後、最後」桃山君がツッコミます。桃山くんは聞きます。「女の子って、ふつう入るの?」「入らない、入らない」矢板さんは言います。山田さんは、「でも、お父さんと入ってる子っているよ」と言います。「わたしは拒否ってるからね」「そのお父さんが、何を考えて入ろうとしているのかによるよ」と僕は言います。「親愛の念の表現というか、ただ、ちか子ちゃんと、純粋に仲良くなりたいからならいいけど」と桃山くんは言います。「やましい気持ちがあったら、逆に覗くだけだろ、だって風呂場で勃っちゃうじゃん」目黒君が混ぜっ返します。「馬鹿」「やめろ」「人様のお父上に対して、一体なんてことを言いだす」「きっと、娘思いのいいお父さんなんだ」

ともかく、このような会話をへて、土曜日に、5班はやっと重い腰を上げて、目黒さんのお寺へインタビューを行うことになりました。目黒さんを通じて、お父さんへのインタビューを取り付けました。午前10時の約束の時間に、僕が目黒さんの家にお伺いすると、石門のところで、目黒さんが立っていました。目黒さんは、石柱に寄りかかって、ピンク色の3DS LLでゲームをしています。

「おはよう・・・他の人たちまだ来てないの」ぼくは目黒さんに聞きました。目黒さんは3DS LLをパタンと閉じて話しました。「うん。今日、父さんは法要でバタバタしてるから、インタビューは母さんがしてくれるって」「ちか子ちゃんは、何のゲームしてたの?」「モンハン」「あっモンハンやってるんだ」「やってる?」「ぼくはやってなくて、でも他の人よくやってるなと思って。ぼくは、『ぼくは航空管制官』っていうのを、最近やっているんだけど」「知らないな」「そっかー」

僕が、目黒さんと1mくらいの距離を置いて、誰か来ないかな、とキョロキョロしていると、山田さんと矢板さんがつれだってやってきました。2人で申し合わせてきたのか、偶然一緒になったのか、不明です。「おはよー」と2人が声を上げると、「おはよー、今日暑い、暑くない?」「暑い暑い」「お寺って、無条件で涼しい気がする」「霊魂的な?」「ウケるw」とゲラゲラ笑いあっています。僕は蚊帳の外です。そのうちに、桃山くんが自転車でやってきました。「目白が遅れるみたいだから、先にお話を伺おう」桃山くんは、目白くんがなんで遅れるかについては話しませんでしたが、たぶん、目白くんはインタビューに行くのがめんどうくさいので、寝坊したとかなんとか、桃山くんに言い訳をしたのだと思います。

目黒さんちの母屋は、お寺の本殿からは20mくらい離れた、旧日本家屋といった風情の、3階建ての家です。なんだか、神聖な場所に入るようで、わくわくします。「おじゃましまーす」と中に入ると、1階の、応接間に案内されました。木の饐えたような、カビくさいような、古い家の匂いがします。でも、案外ふつうの家だし、ふつうの部屋です。ほどなくして、目黒さんのお母さんが出てきました。「はーい、あがってくださーい。暑かったでしょう、でもちか子が外で待ってるっていうから」「おかーさん黙って」目黒さんのお母さんは、日本舞踏の先生をしているけれど、今日は普段着のようです。

このあと、いろんなお話をお母様から伺いましたが、だいたい桃山くんがメモっていたし、ぼくはボケーっとしていて、お話が右耳から左耳へすっぽ抜けていくようなありさまだったので、インタビューの中身は割愛します。

お昼になって、インタビューを終えた僕たちが母屋から出ると、ちょうど住職さん、つまり目黒さんのお父さんが、袈裟を着て境内を歩いているところでした。僕たちは「あっ」と思い、カメラを持っていきていた山田さんは、住職さんの写真を撮りました。『娘の風呂場に入りたがるお父さん』なんて、実際に目の前にすると、そんな考えはスッ飛んでしまうし、顔にも出せません。住職さんは、「今日はインタビューに来てくれて、ありがとうございます」と丁寧に頭を下げてくださいました。とっても礼儀正しくて、感じのいい人に思えました。ちか子ちゃんの様子をみると、すっぱいものでも口に含んだような顔をしていました。もしかしたらそれは照れ隠しで、ちか子ちゃんはお父さんのことが、じつは好きなのかもしれません。

あと、目白くんは結局バッくれました。まあ、やる気が出ないなら、仕方ないと思います。

明日からは、発表の模造紙を、みんなで急いで書かなければなりません。がんばります。



おしまい。

2016年5月29日日曜日

2016年5月1日日曜日

5月1日 こいのぼる

学校と、近所の神社で、こいのぼりがあがっているのを見ました。もうすぐ、こどもの日だからです。

こどもの日というけれど、これまで生きてきた中で、祝日で学校が休みであること以外に、こどものぼくは、得してないです。こいのぼりなんて、別に興味ないし、盛り上がっているのは押し付けがましい大人です。

こいのぼりがあがっている中で、ぼくは他のこどもたちにいじめられたり、からかわれたりしているでしょう。こどもの日なんて、くそくらえです。

大人たちは上から目線だから、子どもが誰一人喜びやしない、こいのぼりなんかをおっ立てて、悦に入っています。

こいのぼりがはためく下で、ぼくはいじめっ子に殴られているのです。

アホくさ。


まあいいや。


おわり。